「桜と卒業」あれから１０年後の卒業
あらすじ
「「桜と卒業」あれから１０年後の卒業」は、高校時代に別れた恋人と再会した女性の物語です。彼女は、桜の下で告白された思い出が忘れられずにいましたが、彼はすでに結婚していました。しかし、彼もまだ彼女を想っていて、二人は再び惹かれ合います。果たして、彼らは本当の卒業を迎えることができるのでしょうか？


• 女性の主人公：佐藤 美咲（さとう みさき）
• 彼女の元恋人：山田 大輔（やまだ だいすけ）
• 彼の妻：山田 美紀（やまだ みき）

「桜と卒業」あれから１０年後の卒業

　美咲は、高校の同窓会に向かう電車の中で、昔の恋人・大輔のことを思い出していた。彼とは、高校３年生の時に桜の下で告白されて付き合い始めたが、進学先が違うことを理由に卒業式の日に別れた。それ以来、彼からの連絡はなく、美咲も彼を忘れようとしたが、どうしても心に残る存在だった。 　同窓会では、久しぶりに会った同級生たちと楽しく話したが、美咲は大輔の姿を探していた。彼は来ているのだろうか？　そんな時、ふと目に入った名札に驚いた。山田 美紀。その名前は、大輔の妻だった。 　美紀は、美咲と同じクラスだったが、あまり親しくなかった女性だった。彼女は笑顔で美咲に近づいてきて、「久しぶりね」と声をかけてきた。「あなたも結婚したの？」と聞かれて、「いえ…まだです」と答える美咲。「私は５年前に結婚したの。夫は…あそこよ」と言って指さした先には、大輔が立っていた。 　大輔も美咲に気づいて目が合った。その瞬間、美咲は高校時代の思い出がよみがえってくるのを感じた。桜吹雪の中で交わしたキス。手をつないで歩いた帰り道。涙で別れを告げられた卒業式。「おめでとうございます」と言おうとしたが言葉が出なかった。 　「ちょっと話そうか」と言って大輔が手招きした。「ごめんね」と言って美紀から離れて歩いて行く大輔。「どこ行くの？」と聞く美紀。「すぐ戻るから」と答える大輔。 　二人は隣接するホテルのロビーに移動した。「どうして連絡しなかったんですか？」と問う美咲。「ごめん…忘れられなくて…」と答える大輔。「私も忘れられなかった…」と言う大輔。「じゃあ、どうして結婚したんですか？」と問う美咲。「親の決めた相手だった…」と答える大輔。「でも、幸せなんでしょう？」と問う美咲。「幸せ…かな…」と答える大輔。
　二人はしばらく沈黙した。美咲は、大輔が自分をまだ想っていることに胸が高鳴ったが、同時に罪悪感も感じた。彼は既婚者なのだ。彼の妻は自分の同級生なのだ。こんなことをしていいわけがない。
　「もう行きましょう」と言って立ち上がる美咲。「待って」と言って手を引く大輔。「もう無理です」と言って振りほどく美咲。「でも、私はあなたが好きだ」と言って抱き寄せる大輔。
　その時、ロビーに入ってきたのは、美紀だった。彼女は二人の姿を見て驚いて止まった。「何してるの！」と叫ぶ美紀。「ごめんなさい」と言って離れる二人。「あなた達…付き合ってたの？」と問う美紀。「そうです」と答える美咲。「でも、もう終わりました」と付け加える。
　「終わりました？　それで済むと思ってるの？」と怒る美紀。「私はあなたに何も悪いことはしていませんよ」と反論する美咲。「そんなこと言われても…」と泣き出す美紀。
　「やめてください」と言って仲裁する大輔。「やめてください？　あなたが一番悪いんじゃないの！」と責める美紀。「ごめんね…本当にごめんね…」と謝る大輔。
　三人はその場で揉め続けた。周りの人々は好奇心で見守った。桜の花びらが舞い散る中で、三人はそれぞれの想いを抱えて苦しんだ。
　それから数日後、美咲は自宅で一通の手紙を受け取った。差出人は大輔だった。手紙にはこう書かれていた。
　「美咲さんへ 　この間は本当にごめんなさい。私も自分でも信じられませんでした。あれから色々考えました。私はやっぱりあなたが好きです。でも、それだけではダメなんですね。私は結婚しています。美紀さんも私のことを愛してくれています。私は彼女にも責任があります。だから、私はあなたとはもう会えません。
　あの日、桜の下であなたに告白した時が一番幸せだったと思います。でも、それは高校生の夢でした。大人になったら、現実に向き合わなければいけません。
　あなたは素敵な女性です。きっといい人に出会えると思います。私はあなたを忘れませんが、これが最後の手紙です。
　さようなら。山田 大輔」

　美咲は手紙を読んで涙がこぼれた。彼の気持ちは分かったが、納得できなかった。彼も自分も本当に愛し合っているのに、どうして別れなければいけないのだろうか？
　美咲は手紙を握りしめて窓から外を見た。そこには満開の桜が咲いていた。