小説作成しました。タイトル:『蒼穹のアンサー(Answer in the Blue Sky)』

小説タイトル:『蒼穹のアンサー(Answer in the Blue Sky)』
第1章:蒼き海の殺意
東和歴203X年、冬。
東和共和国の南西端、「蒼龍(そうりゅう)諸島」周辺の海域は、不気味なほど凪いでいた。
「こちらスペクター01。エリア『ドラゴン・アイ』上空に到達。……視界良好だが、腹の底が冷えるような海だ」
東和空軍・第304戦術飛行隊長、工藤一佐(タックネーム:ウィザード)は、愛機F-19J『シュヴェート』のスロットルを絞り、巡航速度を維持していた。
南冥(なんめい)基地を飛び立って数十分。眼下の「大東洋(グランド・オーシャン)」には、大陸連邦の誇る機動部隊が、どす黒い染みのように展開している。中心に鎮座するのは、巨大空母『覇龍(ハリュウ)』だ。
「スペクター01、こちら早期警戒機『ウォッチマン』。敵空母より艦載機2機発艦。機種、J-55『飛鮫(フェイ・シャ)』。方位2-7-0、急速上昇中」
「了解。……挨拶に来たか」
工藤は僚機と共に迎撃態勢(インターセプト)に入る。ここは公海だが、東和の防空識別圏の内側だ。彼らが「鬼門(きもん)海峡」を我が物顔で抜けるのを黙って見ているわけにはいかない。
視界の端に、独特のカナード翼を持つ機影が捉えられた、その瞬間だった。
『ギュイイイイイイイ!!!』
コクピット内を切り裂くような警告音。RWR(レーダー警戒受信機)が、禍々しい深紅の光を放った。
「なッ……FCR(火器管制レーダー)!? 照射された!?」
『こちらウォッチマン、確認した! 敵機、貴機を完全にロックオンしている!』
それは「監視」ではない。「処刑宣告」だった。
ミサイルの電子の眼が工藤の機体を捉え、引き金には既に指がかかっている。これは軍事的な挑発の域を超えた、明確な「銃口の突きつけ」だった。
「クソッ、正気か!? ここで戦争を始める気かよ!」
工藤は反射的にチャフ(欺瞞紙)を散布し、激しいブレイク(回避機動)を行う。Gが全身の血管を押し潰す。だが、敵のロックオンは執拗に食らいついて離れない。
1分、5分、10分……。
終わらない。
相手は、撃ち返すことを禁じられている東和のパイロットを嘲笑うかのように、執拗に殺意を浴びせ続けている。
(撃つなら撃ってみろ……俺は逃げないぞ)
脂汗がバイザーを曇らせる。30分にも及ぶ永遠のような拷問。燃料計が限界(ビンゴ)を示した時、敵機はようやく反転していった。
「……スペクター01、帰投する。……だが忘れるなよ。この借りは高いぞ」
第2章:帝都の決断
東和共和国首都・暁(アカツキ)特別区。
地下深くに掘削された「国家統合防衛指令所(セントラル)」は、重苦しい沈黙に支配されていた。
「……以上が、蒼龍海域での事象です」
統合幕僚長、剛田(ごうだ)の低い声が響く。
「現場のウィザードたちは耐え抜きました。ですが、大陸連邦はこれを『東和の弱腰』と宣伝し、既成事実化するでしょう」
円卓の中央、首相の神宮寺(じんぐうじ)は、組んだ指に力を込め、スクリーン上の敵空母を睨みつけていた。温厚な仮面の下で、静かな激情が渦巻いている。
「彼らは我が国の喉元にナイフを突きつけた。……『遺憾の意』などという寝言はもういい」
神宮寺はゆっくりと立ち上がり、剛田を見た。
「幕僚長。我々も『懐刀』を持っていることを思い出させてやれ。ただし、音もなく、致命的な場所にな」
「承知いたしました」
剛田は獰猛な笑みを浮かべ、コンソールの赤いキーを回した。
「作戦コード『海神の鉄槌(ポセイドン・ハンマー)』発動。……西海(さいかい)島の『毒蛇(オロチ)』を解き放ちます」
第3章:轟雷(ごうらい)、目覚める
本土西部、西海島。
荒々しい海に面した「轟雷(ごうらい)基地」に、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「アルファ・スクランブル! アルファ・スクランブル! 全機、直ちに発進せよ!!」
第8戦術戦闘飛行隊長、剣崎(タックネーム:スネークアイ)は、ハンガーへと全力疾走していた。
そこには、深く濃い蒼色の洋上迷彩を施された、異形の翼が翼を休めていた。
対艦支援戦闘機 AX-00『ヤマタノオロチ』。
東和の技術の結晶であり、海上の敵を殲滅することだけに特化した死神。
「兵装確認! 間違いないな?」
剣崎が怒鳴る。整備兵が親指を立てた。
「全機、実弾装填完了! 超音速対艦誘導弾『天叢雲(アマノムラクモ)』、各機4発! フルロードです!」
天叢雲。
マッハ3以上で海面スレスレを飛び、空母の船体を両断する“神殺し”の槍。
1機につき4発。これから飛び立つのは16機。
合計64発の超音速ミサイル。それは、いかなる艦隊も鉄屑に変える絶対的な火力だ。
「……12分だ」
剣崎はコクピットに滑り込み、エンジンを始動させた。
「発令から12分で全機離陸。……今日は訓練じゃない。狩りだ」
『キィィィィィン!!』
16機のオロチが、蒼いアフターバーナーの光を引きながら、次々と曇天の空へ駆け上がった。
彼らはレーダーに映らない超低空を這い、音速で南の海へと疾走する。
第4章:アンサー(回答)
大東洋上、大陸連邦空母『覇龍』。
「ハハハ! 東和の戦闘機など、ただの案山子(かかし)だ!」
艦橋では、司令官の張提督が勝利の余韻に浸っていた。
「このまま鬼門海峡を封鎖し、我々の海であることを世界に……」
「――報告ッ!!」
レーダー手の悲鳴が、艦橋の空気を凍らせた。
「北西より高速機影! 超低高度! 数……じゅ、16機!?」
「なんだと!? 合衆連邦軍か?」
「いえ、識別信号……東和空軍! 機種、『オロチ』です!!」
張提督の顔色が変わった。
「オロチだと!? 対艦部隊か!?」
その瞬間、艦内の全警報が一斉に鳴り響いた。
『ピピピピピピピピピピピ!!!!』
「ESM反応! ロックオンされました!! 数、測定不能! ……全方位から来ます!!」
「対空ミサイル準備! ……だめです、既に射程圏内(イン・レンジ)です!!」
モニターには、水平線の彼方から忍び寄る16の蒼い死神。
彼らは、たった今自分たちがF-19Jに対して行った「ロックオン」を、64倍の火力と殺意を持って返してきたのだ。
通信回線に、剣崎の冷徹な声が割り込んだ。
『……こちら東和空軍、ヴァイパー01。貴艦隊の行動は、ラインを越えた』
『我々は既に、貴艦隊の生殺与奪の権を握っている。……即刻、進路を反転せよ。これは警告ではない。“慈悲”だ』
「くっ……!」
張提督は拳を震わせた。
撃てるはずがない。だが、突きつけられた「64本のナイフ」の冷たさは本物だった。しかも、遥か上空には合衆連邦の戦略爆撃機B-9『オーディン』の影まで迫っている。
海と空からの完全なる「詰み」。
「……全艦、転舵。……撤退だ!!」
巨大な空母が逃げるように回頭していく。
夕日に染まる大東洋に、何も語らず、ただ圧倒的な「答え(アンサー)」だけを残して、蒼い戦闘機たちは静かに旋回を始めた。
(完)
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