第四章:崩れる日常
翔太の生活は、目に見えて変わった。財布には常に現金が入っていて、食事もコンビニ弁当からカフェやレストランへと変わっていた。高級なイヤホンや新しい靴も買った。
しかし、外面の変化とは裏腹に、翔太の内面は日々壊れていった。
まず最初に変化に気づいたのは、大学の友人だった。
「最近、お前、なんか雰囲気変わったよな。顔色悪いし……大丈夫か?」
「いや、ちょっとバイト忙しくてさ」
翔太は曖昧に笑ってごまかしたが、心の中では叫び声を上げていた。「誰か助けてくれ」と。
母からの電話にも出なくなった。LINEも既読無視が続き、やがて通知が来なくなった。
そしてある日、警察が大学に現れた。
ゼミの最中、突然呼び出された翔太は、大学の事務室で私服の警察官に事情を聞かれた。
「○○町で起きた窃盗事件の件で、ちょっとお話を伺いたいんです。お時間いただけますか?」
その時、翔太の中で、すべての時間が止まった。
だが、警察は証拠を持っていなかった。ただ「防犯カメラに似た人物が映っていた」とだけ言い、翔太はなんとか「その日はバイトだった」と嘘をついて切り抜けた。
けれど、翔太は知っていた。これはもう時間の問題だ。
その夜、グループチャットには次の指示が届いていた。
《明日、荷物の運搬あり。参加できない者は除外する》
「除外」。その言葉が、妙に生々しかった。グループから“消える”ことの意味は、すでに翔太にもわかっていた。
不安に駆られ、翔太はついに大学の友人・圭介に相談した。
「なあ、もし……友達が犯罪に手を染めてたら、どうする?」
圭介は一瞬驚いたが、静かに言った。
「……やめさせるよ。何があっても。お前がそうなんだろ?」
翔太は何も言えなかった。ただうつむいて、震えていた。
その夜、圭介からの通報で、翔太のアパートに警察が踏み込んできた。
部屋からは、前回持ち帰った“ケース”が発見された。中には盗品と疑われる高級腕時計や現金が詰まっていた。
手錠をかけられたとき、翔太の頭に浮かんだのは――自分の母親の顔だった。
(ごめん……)
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