1日1日を楽しく生きる

ある日の夏に脳幹出血で倒れ復活日々の日常の日記や最近覚えたてのチャットGPTを使って詩や小説などチャレンジしてます。

短編小説作成しました。タイトル:麻呂がやって来た

ミノ711


タイトル:麻呂がやって来た


 朝だ。カーテン越しにやわらかな陽光が差し込み、スマホのアラームが「ピロリロピロリロ」と鳴り響く。

「……あー、もう、日曜なのに……」

 枕元を手探りしながらスマホを止め、私は渋々上半身を起こす。寝癖で髪が右にバクハツしている。まあいい。どうせ誰にも会わない。

 だるい腰を持ち上げ、リビングへ向かう。

 ――そこで、私は固まった。

 ソファーに、見知らぬ男が座っている。

 金色の烏帽子(えぼし)をかぶり、白い直衣(なおし)をまとい、うやうやしく扇子を持ったその男は、まるで時代劇から抜け出したような風貌だった。

 そして、開口一番、こう言った。

「おぬし、そなた、この館の主(あるじ)であろう? 拙者、麻呂と申す」

「いやいやいやいや、ちょっと待てぇぇぇえええ!!!」

 混乱とともに、ツッコミが口から出る。いや、そんな自己紹介ある? しかも何で平安時代スタイル?!

「どっから来たの!? てか、誰?! なんでうちのソファーに座ってんの!?」

 麻呂は優雅に扇をひらひらさせながら、微笑んだ。

「うむ、我は平安の都より時空を超えし麻呂なり。天の導きにより、そなたのもとに降臨したのである」

「神様のお告げかなんかか!?」

 ツッコミが止まらない。むしろ自分の方がバグっているんじゃないかとさえ思えてくる。

 とりあえず深呼吸して、もう一度訊く。

「で、麻呂さん? 本名? 名前なんですか?」

「まことの名は、源(みなもとの)朝麻呂(あさまろ)。略して“麻呂”なり」

「略しすぎ!」

「されど皆、そのように呼ぶゆえ、麻呂で通しておる」

 どうやら悪気はないらしい。むしろ堂々としすぎていて、こちらがだんだん罪悪感を覚えてくる。

 私の名前は中原こはる。会社員。趣味も特技もとくになく、最近は一人鍋にハマっている。それなりに平凡な生活をしていたはずなのに、なんでこんな麻呂が転がり込んでくるのか。

 とりあえず、現実的な問題から確認する。

「警察とか、連絡した方がいいかな……?」

「おお、現代の役人に詣でるつもりか? しかし、麻呂は罪人にあらず。都の貴族ぞ?」

「自己紹介の前に身元保証してほしかったよ……」

 その日、私は一日中、麻呂と過ごす羽目になった。

 彼はエアコンの風にびっくりし、冷蔵庫を「魔の氷箱」と呼び、テレビのリモコンを「魔術の杖か」と称えた。うるさい。

 しかも私の持っていたティッシュを見て、

「これは……紙ではないか? この薄さで、かような柔らかさとは……贅沢すぎて震える……!」

 と、感動のあまり涙を流した。ちょっとかわいかった。

 夜。

「今日は風呂に入りたい。湯あみこそ、貴族の至福なり」

 そう言って、私はバスタブにお湯をためてやった。入浴剤を入れたら「香の湯とは、いと優雅」とか言いながらうっとりしていた。

 だが、問題はその後だった。

「麻呂、バスタオルの使い方がわからぬ……」

「どこで止まってんの!? なんで腰に巻けないの!?」

「拙者、湯浴み後は従者が着替えを整えてくれていたゆえ……」

「一人で生きてくれ、現代に来たなら!!」

 翌朝。

 私は麻呂をどうすればいいのかわからず、出勤するフリをして家を出た。が、気になって昼には帰ってきてしまった。

 すると――麻呂は、掃除機をかけていた。

「おお、帰られたか、こはる殿。そなたのために、“吸塵の神器”を操り、屋敷を清めた次第」

 彼は、私の古いコード式の掃除機にすっかりハマっていた。

「すごいよ麻呂。現代に適応してる……!」

「なに、貴族とは、時代を超えて優雅であるべし」

 ドヤ顔がまぶしい。

 さらに数日後、麻呂はなぜか「推し活」に目覚めた。

「拙者、この“アイドル”という存在に魂を射抜かれし者なり」

「誰!? 誰推しなの!?」

「“乃木坂”なる一族の“さくら姫”……いと麗しき歌姫よ……」

 もう何がどうなってんのか。テレビに向かって扇を振る麻呂。しかも推しカラーのペンライトまで買っていた。Amazonのアカウント、勝手に使うな!

 やがて、私の生活は麻呂中心になっていった。

 いや、麻呂が勝手に中心に居座ってきたと言った方が正確だ。私はすっかり、こはる殿と呼ばれる毎日に慣れてしまった。

 だけど、思う。

 こんな日常、悪くない。

 ある夜、麻呂がふとつぶやいた。

「こはる殿。もしまた、時を越えて戻るとしたら……」

「うん?」

「そのときは、もう一度、この現代に来るぞ。必ずな」

 私は笑った。

「そのときはちゃんと、うちのWi-Fi覚えてから来てよ」

「うむ。次はルーターの仕組みも理解してくる所存である!」

 麻呂の笑顔は、月明かりに照らされてやけにキラキラしていた。


[完]