タイトル:島の掟

プロローグ
九州のある県の南に浮かぶとある島。
人口100人ほどの小さな島で、島民は古くからの掟を守りながら慎ましく暮らしていた。
ここには、昔から語り継がれる伝説がある。
「島の掟を破った者には、島の神が罰を下す」
その罰とは、「消失」。
島のルールを破った者は、ある日突然、誰にも気づかれずに消えてしまうのだ。
その名の通り、島の者たちはその人の存在を忘れてしまう。
写真も記録も、まるで最初から存在しなかったかのように消える。
この話を単なる迷信と笑う者は少ない。
なぜなら、実際に「消えた者」が何人もいたからだ。
第一章:転校生
東京からこの島にやってきた高校生・高橋 亮(たかはし りょう)は、この小さな島の学校に転校してきた。
父の仕事の都合で引っ越してきたのだが、彼は正直、この島のことをよく思っていなかった。
「マジで何もねぇじゃん……」
コンビニもファミレスもなく、夜になると街灯すら少ない。
島民たちは「よそ者」に冷たい。
学校のクラスメートも、彼とは最低限の会話しか交わさない。
そんな中、一人だけ親しげに話しかけてくれる少女がいた。
「木村 咲(きむら さき)」という同級生だ。
「ここ、何もなくてつまんないでしょ?」
「都会から来た人って、だいたいすぐに帰っちゃうんだよね」
咲は明るい笑顔で話しかけてくる。
亮は少し安心した。
「そうそう、この島にはね、変なルールがいっぱいあるんだよ」
「例えば、夜の11時以降は、絶対に外に出ちゃいけないとか」
「なんで?」
亮が尋ねると、咲は少し表情を曇らせた。
「……ううん、なんでもない。とにかく、島のルールはちゃんと守った方がいいよ」
亮は、その忠告をあまり気にしなかった。
第二章:深夜の物音
転校して一週間が経った夜。
両親は仕事で本土に出ており、亮は一人で留守番をしていた。
夜11時を過ぎた頃、ふと、外から**「カリ…カリ…」**という音が聞こえてきた。
(……何の音だ?)
不思議に思い、窓を開けると、遠くの方に人影が見えた。
それは、誰かが地面に何かを刻んでいるように見えた。
懐中電灯を手に持ち、静かに近づく。
そこには、咲がいた。
「……咲?」
彼女は驚いたように顔を上げた。
手には古びたナイフを持っており、地面に何かを書き込んでいる。
「亮くん……どうして……?」
「いや、そっちこそ何してるんだよ?」
彼女は答えず、ただ震えていた。
亮が足元を見ると、地面にはこう刻まれていた。
「見てはいけない」
その瞬間、遠くで何かが動く気配がした。
ザザッ……ザザザ……
「誰かいるのか……?」
そう呟いた瞬間、咲は亮の腕を強く掴んだ。
「亮くん……お願い……すぐに帰って」
その表情は、今までに見たことがないほど怯えていた。
(やばい……これは、本当にマズいのかもしれない)
亮は急いで家に戻った。
だが、それが最悪の夜の始まりだった。
第三章:消失
次の日、学校へ行くと、奇妙なことが起こっていた。
「……咲? いないのか?」
教室を見回すが、咲の姿がない。
先生に聞いても、クラスメートに聞いても、誰も彼女のことを知らないという。
「……咲? 誰それ?」
そんなはずはない。
亮は昨日、確かに彼女と会話をしていた。
だが、スマホの履歴を見ても、彼女とのやり取りは消えていた。
写真も、記録も、すべてが消えていた。
(おかしい……)
彼は焦りながら、島の図書館で古い資料を調べた。
すると、そこには古い記事があった。
「昭和30年頃、この島で謎の消失事件が相次いだ。
島の掟を破った者は、ある日突然消え、誰の記憶からも消される――」
(嘘だろ……咲も……?)
亮はその時、気づいた。
「俺も島の掟を破った」と。
第四章:追われる者
その夜、亮は奇妙な物音で目を覚ました。
「カリ……カリ……」
窓の外を見ると、地面に何かが刻まれていた。
「次はお前だ」
ゾッとした瞬間、背後で誰かが囁いた。
「見てはいけないと言ったのに」
振り向くと、そこには……
歪んだ笑顔の咲が立っていた。
エピローグ
翌朝。
島ではいつも通りの平和な日常が続いていた。
だが、学校の教室には高橋亮という生徒の姿はなかった。
「……亮? 誰それ?」
クラスメートは、亮の存在を覚えていない。
先生も、家族も、誰もが彼を忘れていた。
島の神が、また一人を消したのだ。
そして、誰かがまた、夜に「見てはいけないもの」を見つけてしまうのだろう――。
【完】
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